【コロンビア(米南部サウスカロライナ州)=上塚真由】11月の米大統領選に向けた民主党の候補指名争いの第4戦が行われるサウスカロライナ州は、民主党の支持層の約6割が黒人で、黒人票の行方が勝敗のカギを握る。同州ではバイデン前副大統領(77)が黒人からの支持を幅広く集めて優勢な一方、サンダース上院議員(78)も若者層を中心に浸透している。
同州で支持率トップのバイデン氏にとって大きな助けとなっているのは、初の黒人大統領のオバマ氏を副大統領として支えた実績だ。コロンビアでビル管理の仕事をするベッキー・ブリムフィールドさん(40)は「オバマ氏と近い存在で他の候補よりも信頼できる。バイデン氏が当選すれば、オバマ時代の続きのようなものだ」と語った。
バイデン氏は同州選出の議員らと長年、懇意にしており、予備選直前の26日には民主党で黒人の大物下院議員、ジム・クライバーン氏が支持を表明。黒人社会で影響力が大きい同氏の登場で、黒人支持者らの引き締めにかかった。高齢有権者の中には「バイデン氏以外の候補はよく知らない」と語る人も少なくない。
さらに南部は保守的な土地柄で、民主党支持者も左派ではなく穏健派の主張を好む傾向があり、黒人のメアリー・フィリップスさん(60)は「(国民皆保険で)政府が大きくなるよりも、さまざまな選択肢があったほうがよい」と語り「他の候補はアイデアはあるが、実践する手段が見えない。経験豊富なバイデン氏が一番だ」と話した。
一方、バイデン氏の懸念材料は黒人の若者層で、格差解消を訴えるサンダース氏が取り込みを狙う。同氏は2016年の民主党候補指名争いで白人票以外の獲得に苦戦したが、今回はバイデン氏に次いで黒人党員からの人気を得る。サンダース氏の28日の集会に参加した黒人の大学生、ダミオン・ドラガンさん(24)は「両親はバイデン氏を支持しているが、サンダース氏に投票する。知名度ではなく、自分の生活のために力を尽くしてくれる人を選ぶ」と語った。
黒人層は民主党の伝統的な支持基盤で、サウスカロライナ州で黒人に強い候補としてアピールすることは指名争いの行方も左右する。同州のファーマン大学のダニエル・ビンソン教授は「知名度と実績で黒人に人気のバイデン氏がどれだけサンダース氏を引き離すかが焦点だ。10ポイント以上の差であればバイデン氏の真の勝利といえるが、5ポイント以下に肉薄されれば、今後の指名レースに響くだろう」と指摘した。