広島地検は自民党の河井案里参院議員=広島選挙区=が初当選した昨年7月の参院選をめぐり、車上運動員に違法報酬を支払ったとして、公選法違反(買収)の疑いで案里氏の公設秘書と陣営スタッフ、夫で前法相の河井克行衆院議員の政策秘書の3人を逮捕した。
公選法は連座制を規定しており、3人のいずれかが連座制の対象と判断され、禁錮以上の刑が確定すれば、案里氏は失職する可能性がある。
連座制は、候補者本人の関与の有無を問わない。「秘書が…」の逃げ口上は許されない。
克行氏は事実上、案里氏の陣営を指揮していたとされ、公選法違反への関与も問われる。案里氏同様に政治責任は免れない。
克行氏は昨年10月、案里氏の疑惑が明らかになったことを受けて法相を辞任していた。辞任に際しては「私も妻も全くあずかり知らない」と話し、「しっかり調査して説明責任を果たしていきたい」と述べていた。
ところが夫妻それぞれの公設秘書が逮捕されたことを受け、2人は「捜査中であり、事実関係に関するコメントは現時点では差し控える」と同文の談話を発表したのみである。
法の番人である法相の重責にあった政治家として、恥ずべきところはないか。克行氏は自身に深く問い直さなくてはならない。
連座制の対象となるのは選挙運動の総括主宰者や出納責任者らだが、平成6年の公選法改正で選挙運動の計画立案、調整や運動員の指揮監督をする組織的選挙運動管理者にも拡大された。
21年の衆院選では、民主党の小林千代美氏と後藤英友氏が、24年の衆院選では自民党の徳田毅氏が連座制適用の対象となり、いずれも失職前に議員辞職した。
広島地検に逮捕された3人の容疑は昨年7月の参院選をめぐり、案里氏の選挙カーでアナウンスする車上運動員14人に対し、日当1万5千円の法定上限を超える資金を提供した買収の疑いだ。
この参院選では、自民党本部から案里氏側に、破格の1億5千万円が提供されたことも分かっており、案里氏もこれを認めている。党からの提供資金が買収の原資となった疑いもある。説明責任は河井夫妻のみではなく、自民党にもある。これを放置しては、政治に対する不信は増すばかりだ。