【北京=三塚聖平】肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)が続く中、中国のデジタル通貨に関する計画が遅れているとの見方が出ている。発行計画を担う中国人民銀行(中央銀行)の業務が、感染拡大の影響で支障をきたしているためだ。ただ、感染対策でデジタル通貨へのニーズが増しているという見方もあり、今年末には「デジタル人民元」がお披露目されるとの観測も伝えられる。
「中国のデジタル通貨の研究が遅れている」
共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は2月26日付で、このような情報筋の見方を報じた。同記事によると、今年1~3月の間に人民銀による「重要発表」が行われるとみられていたが、計画通りに進む可能性が低くなっているという。デジタル通貨計画に関わっている人民銀の政策や研究担当の職員が、新型ウイルスの影響で職場復帰が遅れているためだ。
人民銀が「デジタル人民元」とも呼ばれるデジタル通貨の発行計画を進めていることは広く知られる。昨年秋には政府系シンクタンクの副理事長が「人民銀が世界で最初にデジタル通貨を出す中央銀行になる可能性がある」という見方を示し、2020年初めにもデジタル人民元が発行されるとの憶測を呼んでいた。
一方、中国政府系英字紙チャイナ・デーリーは、新型ウイルスの流行で電子決済を使う傾向が増していることが「デジタル通貨の発行を加速させることになるかもしれない」という専門家の見方を伝える。
現在、中国では新型ウイルスの影響で、スマートフォンを使った電子決済の利用が伸びていると指摘される。人民銀が、回収した紙幣の消毒を金融機関に求めるといった対策を講じているのも、紙幣の使用がウイルス感染につながると懸念されるためだ。
環球時報の記事は「20年末にはデジタル通貨が登場する」という見通しも報じる。中国金融筋は「人民銀は技術面ではデジタル通貨発行のめどがついているとみられるが、通貨に関することなので発行には高度な政治判断も必要になる」と分析する。