新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府が緊急対策「第2弾」をまとめた。感染拡大の防止とともに、経済停滞に対応する措置である。
大規模イベントの自粛や一斉休校などが相まって、企業活動や消費の動きに急ブレーキがかかっている。この対策が最大限の効果を生むよう、円滑に執行すべきは当然である。
ただし、これは当面の対症療法にすぎない。景気に対する国民の不安を拭うには、いかにも力不足だといわざるを得ない。
安倍晋三首相は、今後10日間程度の自粛継続を要請した。政府の専門家会議は感染対策は数カ月以上続けなくてはならないとしている。その間は経済も低迷から抜けられない恐れがある。政府はこうした事態に備え、より大胆で力強い経済政策を発信すべきだ。
海外でも危機感が急速に高まっており、トランプ米大統領は経済対策を検討すると表明した。減税も視野に入れているという。日本も補正予算編成を視野に入れた本格的な対策を検討すべきだ。
第2弾は、中小・小規模事業者向けに実質無利子・無担保で融資する制度などで企業の資金繰り支援を強めた。製造業の国内回帰などサプライチェーン(供給網)の再構築なども後押しする。
多くの企業が事業縮小に追い込まれている。一連の措置を活用して唐突な需要消失という異常事態を乗り切る一助にしてほしい。
残念なのは、政府と日銀の対策に連動がみられないことだ。日銀はすでに市場への潤沢な資金供給を行っているが、企業が必要な資金を借りやすくなるよう金融機関を後押しするなど、ほかにも検討すべき対策がある。これを政府と一体で打ち出せば、より強いメッセージになったのではないか。
感染拡大で、今年1~3月の国内総生産(GDP)は2四半期連続のマイナスとなる可能性が高まっている。これは、欧米では景気後退とみなされる状況だ。事態がいつ収束に向かうのか分からないという事情はあるにせよ、政府・日銀が政策を逐次投入するばかりでは局面の打開を図れまい。
もう一つ、残念なのは、安倍首相の発信だ。首相は第2弾を決めた会合で発言したが、会見は開かなかった。先が見通せない今だからこそ、首相自らが国民に語りかける意味がある。その機会は何度あってもいいはずだ。