さいたま少年鑑別所職員の浅野法代さん(53)が埼玉県庁前で刺殺された事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された浅野正容疑者(51)は、文教大人間科学部臨床心理学科の准教授を務め、犯罪心理学などを専門としていた。別居中の妻とみられる法代さんと同様、少年鑑別所での勤務経験を持ち、担当するゼミからは警察官や家庭裁判所調査官も輩出していたという。
文教大の近藤研至学長は17日、越谷キャンパス(埼玉県越谷市)で記者会見を開き「被害者の冥福を祈るとともに、世間をお騒がせしたことをおわびします」と陳謝した。
人間科学部の益田勉学部長は「大変驚いた。トラブルなども把握していない」。正容疑者は温厚で物静かな人柄で、学生活動をサポートする教員組織の委員も務める「縁の下の力持ち」だったという。
大学側の説明によると、正容疑者は少年鑑別所職員などを経て平成19年から大学で勤務していた。実務経験を生かして犯罪被害者の心理について解説する授業などを担当し、ゼミは司法関係の公務員を目指す学生らに人気だった。埼玉犯罪被害者援助センター理事を務めるなど学外活動にも熱心だったという。
一方、法代さんは昨年4月からさいたま少年鑑別所の統括専門官として非行少年の処遇に当たっていた。
上司の玉井清一次長は「優秀で人格も円満。口数は少ないが起案が的確で、少年からの信頼も厚かった」と明かす。同居する3人の娘のことを常に気にかけ、宿題を手伝うなど熱心に子育てに取り組んでいたという。
同僚たちが最後に法代さんを目にしたのは、事件の約30分前の16日午後5時半ごろ、現場近くの庁舎から退勤する姿だった。
関係者によると、正容疑者と法代さんとは昨年ごろから別居していたとされる。
重なるキャリアを持つ2人の間に何が起きたのか。捜査関係者によると、調べに対し正容疑者は、動機を黙秘しているという。
(内田優作)