東京電力福島第1原発事故で避難指示区域となった福島県南相馬市小高区(旧小高町)の住民ら約300人が、避難生活を余儀なくされたとして、東電に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が17日、東京高裁であった。村田渉裁判長は小高区で暮らす利益が侵害されたと認める一方、総額約11億円の支払いを命じた1審東京地裁判決を変更、賠償額を約3億6千万円に減額した。
東電は国の中間指針に基づき、避難に対する慰謝料として小高区の住民らに1人850万円を支払うとしている。住民側はこれを不十分として、避難慰謝料とは別に「ふるさと喪失」による損害を請求。控訴審では原則1人当たり約1800万円の上乗せを求めていた。
村田裁判長は、事故前の小高区に戻すには相当長期間を要し、安定的に生活する利益が侵害されたと認定。ただ、生活基盤の変化による影響は一様でなく、賠償額は「影響の少ない人の水準にとどまらざるを得ない」として上乗せ額を1審の1人300万円から減額し、100万円とした。
東電や国を訴えた同種の集団訴訟は全国で約30件あり、高裁判決は賠償を認めた12日の仙台に続き2例目。1審の賠償総額は過去最高だった。
原告側代理人の弘中惇一郎弁護士は「ふるさとが変容したことは共通の損害。減額は納得できず大変残念だ」と判決を批判した。