【北京=三塚聖平】新型コロナウイルス感染拡大の中心となった中国からの訪日客数激減のきっかけとなったのは、1月下旬に始まった海外旅行の制限措置だ。同措置がいつまで続くかは明らかでないが、中国当局は感染拡大が進行している欧米からの感染者の「逆流」を警戒。世界規模でのウイルス蔓延(まんえん)が深刻化している中で、中国からの訪日客減少は長期化する可能性が高い。
中国政府は、1月27日に海外への団体旅行の一時停止措置を発動した。当時は中国で感染拡大が加速しており、世界規模での流行を食い止めることが期待されていた。中国国内における団体旅行も1月24日に停止されており、中国の観光産業は大打撃を受けている。中国政府は、一連の措置の解除時期を明らかにしていない。
現在、中国国内では新たな感染者が大幅に減っており、一部の観光地は一定の条件下で営業を再開している。その一方で、海外への団体旅行の停止措置の解除がいつになるかは不透明さが以前より増している。中国国外で感染して入国する事例が急増しており、中国当局が対策に神経をとがらせているためだ。
北京市では、全ての入国者を原則として一律に隔離施設のホテルに移送し、14日間の医学的観察を義務付ける措置を今月16日から始めた。各地では水際対策が強化されており、中国から海外に出る人はさらに減るとみられる。
中国の海外旅行者数は増加を続けており、中国文化観光省によると2018年に海外旅行に出た中国国民は延べ1億5千万人弱だった。経済成長を受けて旅行先での消費額も大きくなっているため、事態が長期化すれば日本のみならず世界の観光産業に深刻なダメージを与える恐れがある。