安倍晋三首相は22日午前、防衛大学校(神奈川県横須賀市)の卒業式で、自衛隊最高指揮官として訓示し、憲法9条に自衛隊を明記する憲法改正に改めて意欲を示した。自衛隊違憲論に言及した上で「隊員が高い士気のもとで使命感を持って任務を遂行できる環境を作っていかなければならない」と強調した。
首相は訓示で、情報収集活動のため先月2日、海上自衛隊横須賀基地から中東海域に向かった護衛艦「たかなみ」の出航式の際、会場近くに「憲法違反」のプラカードが掲げられていたと指摘。憲法改正に直接的には言及しなかったものの、「隊員の子供たちも目にしたかもしれない。どう思うだろうかと思うと言葉もない」と語った。
また、新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での船内消毒や乗客搬送、医療業務といった自衛隊活動にも言及。感染者を出さなかった自衛隊について「基本に忠実に手順を進めていく習慣が身に染みついているからこそ、完璧な任務の遂行が可能になった」と評価した。
日米安全保障条約改定から60年を迎えた日米同盟に関しては「同盟強化に向けて果たしうる役割の拡大を図っていく。その高い自覚のもとに職務に邁進(まいしん)し、日米の紐帯(ちゅうたい)を揺るぎないものにしてほしい」と求めた。
卒業式は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、卒業生の家族や来賓を招待せずに開催された。卒業生は本科と研究科(大学院)合わせて508人。このうち任官辞退者35人をのぞく473人が卒業式に出席した。職員らを合わせた出席者は約600人で、例年の約2000人から大幅に規模を縮小した。
式終了後、卒業生は制帽を一斉に高々と投げて走って退場する恒例の「帽子投げ」を行った。防衛省は卒業式の様子をインターネットで中継した。