関西電力が減額した役員報酬のうち計約2億6千万円を退任後に補填(ほてん)していた問題で、補填を決めた平成27年当時会長の森詳介元相談役と社長の八木誠前会長以外に、役員ら複数の幹部も補填の事実を把握していたことが23日、関係者への取材で分かった。補填は取締役会や株主総会の審議を避けるため役員らが退任した後に支給する「抜け道」を使っていた。金品受領問題と同様に、役員らがトップの決定を黙認する構図が明らかになった。
補填の対象者についても、関電は25年以降に退任した幹部と説明しているが、補填を受けていない複数の幹部の存在が判明。「人事や報酬はトップの専決事項」(同社関係者)とされ、役員らが黙認していたこともあり、会長や社長が補填対象者を恣意(しい)的に判断していた可能性がある。報酬をめぐる不透明な過程がさらに浮き彫りになった格好だ。
関電は23年の東京電力福島第1原発事故後に原発を稼働停止し、大幅な赤字に転落。役員報酬を減額した上で2度の電気料金値上げに踏み切った。
関電によると、森氏や豊松秀己元副社長を含む常務執行役員以上の18人に対し、カットされた役員報酬のうち総額2億6千万円を還元していた。役員の報酬額は取締役会や株主総会での議決が必要になるため、役員らの退任後に嘱託職員として雇用し、給与として減額分を補填していた。
役員報酬の減額は電気料金値上の説明にも使われていた。一般社員の給与もカットされたり計7回分の賞与を停止されたりしているが、補填は受けていない。
関電は役員らに補填分の返還を求める一方、森氏と豊松氏を除く補填受領者の氏名の公表を拒否している。また、森氏と八木氏は関電を退社したことを理由に取材に応じていない。
役員報酬の補填は金品受領問題の再調査にあたった社外弁護士らによる第三者委員会の調査で判明した。