カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件で昨年12月、現職の国会議員を収賄容疑で17年ぶりに逮捕した東京地検特捜部。一方で、共犯とされる元政策秘書や贈賄側の観光会社会長は逮捕、勾留せず、在宅のまま起訴した。近年の特捜部は体調などへの配慮に加え、捜査協力した容疑者の逮捕を見送り、不要な勾留を避ける傾向が顕著となっている。その背景と狙いを探ってみた。(山本浩輔、宮野佳幸、吉原実)
議員は50日間勾留、元政策秘書は在宅起訴
特捜部は昨年12月25日、日本国内でIR参入を目指していた中国企業「500ドットコム」側から現金300万円などを受け取ったとする収賄容疑で、当時IR担当副大臣だった衆院議員の秋元司被告(48)を逮捕。今年1月14日には同容疑で再逮捕した。秋元被告は2月12日に保釈されるまで50日間、勾留された。
一方、秋元被告の「金庫番」を長く務めた豊嶋晃弘・元政策秘書(41)については「500社」側に架空の領収書発行を依頼するなど秋元被告に加担したとする「身分なき共犯」として、在宅のまま取り調べを行い、収賄罪で起訴した。
一方は逮捕、勾留を伴う強制捜査だったのに対し、一方は在宅捜査。2人の扱いの違いは何なのか。
関係者によると、秋元被告は逮捕前から身の潔白を訴えたほか、保釈2日後の2月14日の会見で「無罪を主張していく」と強調するなど、起訴内容を全面否認している。これに対し元政策秘書は、体調不良で入院していたことに加え、証拠を突きつけられて容疑を認めたことが大きく影響したようだ。
秋元被告は、北海道留寿都(るすつ)村に家族でスキー旅行に招待され、「500社」とともにIR参入を検討していた札幌市内の観光会社「加森観光」に宿泊費などを負担してもらったとする内容でも起訴された。
特捜部は同社の加森公人会長(76)についても在宅のまま捜査を進め、贈賄罪で起訴したが、加森会長も逮捕を免れている。特捜部の捜査に協力したことが一因とみられる。