自民党の河井案里参院議員(46)=広島選挙区=陣営による車上運動員への違法報酬事件。広島地検が24日、案里氏の公設秘書ら2人を公選法違反(買収)の罪で起訴し、舞台は案里氏に対する連座制適用に移る。起訴から100日以内で判決に至る「百日裁判」で公設秘書の有罪が確定した場合、案里氏の当選が無効になる可能性は高い。今後は、夫で前法相の克行衆院議員(57)=自民、広島3区=が関与していたかどうかが捜査の焦点になる。
広島地検は今回、案里氏の公設秘書、立道(たてみち)浩被告(54)が連座制の対象となる組織的選挙運動管理者に認定できると判断して起訴。同時に百日裁判の申し立てに踏み切った。立道被告の有罪が確定すれば、検察側は案里氏への連座制適用を求めて行政訴訟を起こすことになるが、訴訟では立道被告が「管理者」と認定できるかが焦点となる。
ただ、立道被告が連座制適用の立場にあるのか見方は分かれる。公選法に詳しい弁護士は「ウグイス(車上運動員)だけを管理しており、過去の判例に照らしても管理者としての権限の範囲が狭すぎるのではないか」と指摘。これに対し、検察幹部は「ウグイスだけでなく、それ以外も管理しており、連座制適用の要件を満たしていると考えた」としている。
案里氏に連座制が適用されると、当選が無効になり、同一選挙区からの立候補が5年間禁止される。直近では、平成25年7月の参院選で車上運動員に法定上限の2倍の報酬を払ったとして当時の秘書が逮捕された広野允士(ただし)元参院議員に適用された。
広野氏の秘書は同様に百日裁判を申し立てられ、起訴から約1カ月半で有罪が確定。検察側はその約1カ月後、広野氏の参院選比例区での5年間の立候補禁止を求める行政訴訟を東京高裁に起こし、約4カ月で立候補禁止が認められた。今回も同様の流れで進むとみられる。
案里氏の選挙が事件化したことから、克行氏に連座制が適用されることはないが、広島地検は案里氏陣営を事実上指揮していた克行氏が違法報酬を把握していた疑いもあるとみて、立件も視野に慎重に捜査を続ける。ある検察OBは「当初から夫妻の関与の立証を目指した捜査だったはずだ」と指摘する。
克行氏には陣営スタッフらに現金を手渡すなどした買収疑惑も浮上している。地検は関係者からの聴取を継続し、詳しい経緯や現金の趣旨の解明を目指すとみられる。