新型コロナウイルスの感染拡大に対処する政府の緊急経済対策をめぐり、政府・与党で対策の柱となる現金給付のあり方に関する議論が大詰めを迎えている。政府は、所得が減った一部世帯に限り、1世帯当たり20万~30万円程度を給付する案を検討しているが、27日の自民党の会議では、対象の線引きや給付の手法をめぐり異論が噴出した。一方、公明党は一定の線引きを設けた上で、1人当たり10万円を給付するよう求めている。両党は週明けにも提言を取りまとめる。
「所得が減った人をどのように把握するのか」「減収を把握するのに時間がかかりすぎるのではないか」
自民党が27日に開いた政調幹部会議では、給付世帯を限定する方法をめぐり政府案への疑問が相次いだ。
ただ、「所得が減った一部世帯に限り給付」という案は、商品券の配布や全世帯への現金一律給付など、さまざまな案をせめぎ合わせた結果編み出した産物でもある。政府は、約5300万の全世帯のうち、対象を一定の所得水準を設けるなどして1千万世帯に絞り込むことも検討している。
現金給付案にいち早く言及したのは、自民党の岸田文雄政調会長だ。22日には、即効性のある経済対策として「現金給付をはじめ思い切った対策を考えなければいけない」と指摘。党内には、国民にイベント自粛などの協力を要請していることを踏まえ、一時はすべての国民に一律給付という案もあった。
しかし、現金給付は貯蓄に回り、消費拡大につながらないとの懸念もある。麻生太郎副総理兼財務相は現金の一律給付に消極姿勢を見せた。
そこで出てきたのが、給付を新型コロナに関連して「所得が減った世帯に限る」という案だ。自民党案も政府の考えに沿った内容となる見込みで、自民党幹部によると、給付方法は自己申告制が有力という。
しかし、党内では二階俊博幹事長らのように商品券の配布を望む声も残っており、情勢はなお流動的だ。
一方、公明党の斉藤鉄夫幹事長は27日の記者会見で、所得制限など一定の線引きを設けた上で、1人当たり10万円を給付する案を政府に提言する考えを示した。山口那津男代表は同日、記者団に「収入が激減したり、現実に生活に困っている人が大勢いる」と指摘。「党として一番困っている方々にきちっと対応ができるような意味を含め、生活支援の現金給付、1人当たり10万円を目安にと主張する」と明言した。
党内には当初、平成21年に全世帯に支給した「定額給付金」がばらまきとの批判を浴びた経緯を踏まえ、現金給付には消極的な意見もあった。
ただ、迅速な生活支援には商品券の配布などよりはよいと判断した。党幹部は「斉藤氏が表明した以上、党一丸となって政府に働きかける」と語った。(奥原慎平、石鍋圭)