家族や友人をレンタルする代行ビジネスを扱った、NHKの国際放送向けドキュメンタリー番組「Inside Lens」をめぐり、利用客として登場した出演者が実際の客ではなく、会社が用意したスタッフだった問題について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は31日、放送倫理違反があったと認定する意見を公表した。
問題となった番組は、平成30年11月に国際放送「NHKワールド JAPAN」で放送。国内外で活動するフリーのディレクターが企画を提案し、NHKエンタープライズが制作した。昨年1月までに、約160の国と地域で計8回放送されたという。
意見書では、番組で紹介した利用客3人の選定をレンタル会社の社長に任せきりにしていたこと、また、試写の際、委託元であるNHKのチーフプロデューサーは、利用客の言動に疑問を感じていたにもかかわらず、問いたださなかったことなどに言及。利用客が匿名ではなく実名で、モザイクなどの処理をせず顔を出して取材に応じたことで相手を信頼してしまい、油断と落とし穴につながったと指摘した。
その上で「自主制作か外部委託か、持ち込み番組かを問わず、放送局は全ての番組に放送責任を負い、放送倫理にかなったものでなければならない」とし、NHKが適正な考査を行わず放送したことに放送倫理違反があったと判断した。
NHKは平成26年5月に放送された「クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」が、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の指摘を受けた経緯から、匿名性の高い取材者などのリスクを見える化する確認シートを導入してチェック体制を強化してきた。今回の問題を受け、NHKは利害関係のある第三者から取材対象者の紹介を受けているかどうかについても、注意を促すとしている。