日銀、成長率見通し引き下げ検討へ 景況感悪化、雇用と資金繰りに懸念





東京都中央区の日本銀行本店(本社ヘリから、彦野公太朗撮影)

 日本銀行が1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は大企業製造業の業況判断指数(DI)が7年ぶりのマイナスとなるなど、新型コロナウイルスの感染拡大で、企業心理が大幅に冷え込んでいる実態が鮮明になった。雇用環境や企業の資金繰り悪化も懸念される中、日銀は4月末に開く金融政策決定会合で、令和元年度と2年度の実質国内総生産(GDP)について成長率見通しの下方修正を検討する。

 日銀は27~28日の決定会合で3カ月に一度の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめる。

 前回1月のリポートでは新型コロナについて「今の時点でSARS(重症急性呼吸器症候群)のような影響がある可能性は高いとは見ていない」(黒田東(はる)彦(ひこ)総裁)などと判断し、元年度の成長率見通しを0・8%(政策委員の予測中央値)、2年度を0・9%(同)に上方修正した。

 だが、「2月下旬に局面が変わった」(日銀幹部)。それまで中国の問題とみられていた新型コロナの感染が、欧米など世界に一気に広がったからだ。

 日銀内では「1~3月期に成長率が落ち込んでも、当初はV字回復を想定していたが、4~6月期にも影響が及ぶ」(幹部)などと、問題の長期化を予想する見方が広がる。

 最大の懸念は、雇用と企業の資金繰りの悪化だ。

 今回の短観では、全規模全産業の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)がマイナス28と前回12月調査に比べ3ポイント悪化。とくに、外出自粛などで売り上げが激減した外食産業など非製造業の落ち込みが大きく、雇用を維持できなくなる恐れがある。

 資金繰り判断DI(「楽である」-「苦しい」)も13と同じく3ポイント悪化。企業の資金繰りが急速に厳しくなる中、企業倒産が増えれば、それにつれて雇用も失われる。

 政府は感染収束後の財政出動で、一気に景気を浮揚させたい考えだ。だが、新型コロナの感染拡大が長引き失業率の上昇など雇用環境が悪化すれば、こうしたシナリオも崩れかねない。



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