【もう一筆】杓子の人情

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 還暦にもなると、人の世は杓子(しゃくし)定規に割り切っては成り立たないものだとつくづく思う。

 車検や自賠責保険の期間が切れた車を運転すると、違反点数6で免許停止の行政処分に加え、1年6月以下の懲役または80万円以下の罰金という刑事処分を受ける。だが、期間切れに気付かず運転した場合は道路運送車両法などに規定がなく、処分対象にならないという。

 秋田県警の職員が私用先で車検切れに気付き、そのまま1キロ運転して帰宅。上司は職員の報告を伝え聞き、車検切れは帰宅後に気付いたように指示した。法令の解釈に詳しい上司は「違反となれば面倒なことになる」と、部下の職員をかばう一心だったという。

 たかが1キロ、されど1キロ…。この指示が後に発覚し、上司は停職となり自ら降格。犯人をかくまったとして簡裁に略式命令を請求された。

 この上司とは彼だと知り、さもありなんと思った。日常に密接な問題を取材した際、彼はさわやかで懇切丁寧に対応してくれた。彼ほどの階級になると偉ぶったり面倒がったりする人もいる中で、県民を守る使命感と厚い人情を感じたからだ。

 警察組織は法令厳守が大前提なのは言うまでもない。とはいえ、警察が県民に愛されるには、杓子定規な対応ばかりでなく、潤滑剤としての人情も欠かせないはずだ。

 県警に留まるのもつらいと思うが、彼の人情を知る人は県警内外に少なくないだろう。試練を乗り越え、県民のために再び活躍することを願うばかりだ。(八並朋昌)

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