安倍晋三首相は、5月9日にロシア・モスクワで開かれる対独戦勝75周年記念式典への出席を見送る方向で最終調整に入った。複数の政府関係者が明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大で、プーチン大統領との日露首脳会談に向けた事前準備が進んでいないことなどを踏まえた。
プーチン氏は、戦後75年の節目となる今年の対独戦勝記念式典に首相を招待。1月にモスクワを訪れた北村滋国家安全保障局長と面会した際にも、首相の出席を重ねて求めていた。首相も平和条約締結交渉の進展に向けた首脳会談を念頭に前向きに検討していた。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ラブロフ露外相の来日や、条約締結交渉の実務を担う森健良外務審議官とモルグロフ露外務次官による協議が3月中に行えず、首脳会談の準備が滞っている。
国内外で感染が終息する見通しが立たないことから、首相は出席を見送る方向で調整することにした。政府高官は「首相であっても海外出張は難しい」と打ち明ける。
対独戦勝記念式典への出席をめぐっては、国内に「北方領土の占領を正当化するロシア側に利用されかねない」との批判もあった。次の日露首脳会談は、9月に極東ウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」の機会になるとみられ、前回の会談から1年近く間隔があくことになる。