新型コロナウイルスの感染拡大防止に国を挙げて取り組む米国で、貧富の格差が浮き彫りとなっている。ニューヨーク市では別荘地へ退避する富裕層が続出する一方、市内の一部地域の地下鉄車内は、コロナ禍の最中でも出勤せざるを得ない人たちで混雑する状態に。低所得者層の割合が高い中西部ミシガン州デトロイト市の致死率が際立つなど、貧困層を直撃する実態が指摘され始めている。(ニューヨーク支局 上塚真由)
「不平等の象徴」
ニューヨーク市中心部から30分ほどのブロンクス区。3月末のある日の朝、地下鉄の「170丁目」の駅ホームで電車を待つ人でごった返す様子がソーシャルメディア(SNS)に投稿された。市中心部の駅は閑散とする中、全く違う光景に衝撃が広がった。
この周辺は、平均世帯収入が約2万2000ドル(約240万円)と州平均の3分の1程度で、所得水準が低いブロンクス区の中でも最も貧しい地域の一つ。コロナ禍の最中でも、生計を維持するため出勤せざるを得ない人たちは感染防止策として奨励されている「ソーシャルディスタンス(他人との距離)」を確保できない状態だ。
州の自宅待機命令を受けて、ニューヨークの地下鉄を管轄する州都市交通局(MTA)は3月末から、本数を減らして地下鉄を運行している。