政府の緊急事態宣言を受け外出自粛期間が始まったが、対象の7都府県では、商業施設などへの休業要請をめぐって判断が割れている。娯楽施設や商業施設などに幅広く網をかけたい東京都に対し、他の6府県は慎重姿勢を崩さない。背景には感染拡大へのリスク認識や、その後の補償問題への懸念がある。
東京都の小池百合子知事は8日、休業を要請する業種や施設について「国と連携を取りながら早く決めたい」と述べた。同日、厚生労働省は映画館や劇場などの遊興施設について、広さに関係なく使用制限などを要請できる対象に指定。都は9日までに対象施設を決定し、10日に発表、11日からの実施を目指す。
本来、7日の宣言と同時に施設の休業も求める方針だった都は、居酒屋やナイトクラブなども対象に含める具体案をまとめていた。しかし、施設への要請は外出自粛の効果を見極めてからなどとする政府側とせめぎあいの結果、11日からの実施に落ち着いたという。
背景には都内で拡大する感染状況への危機感がある。感染者数が1日100人を超え、安倍晋三首相も7日の会見で「このペースで感染拡大が続けば1カ月後には8万人を超える」と警鐘を鳴らしている。
厚労省の調査によれば、夜の繁華街で感染したケースは多く、小池氏は感染源対策が急務との認識を抱く。また、昼間には近隣地域から都内に約300万人が流入しており、感染経路不明に一定の歯止めをかけたいという狙いもある。
これに対し、他の6府県はそもそも都と感染者数の桁が違い、医療崩壊へのリスク認識にも、都と間に差異があるとみられる。さらに、休業要請はその後の企業への補償問題につながり、自治体財政の圧迫を招くという懸念が強くある。
神奈川県の黒岩祐治知事は、6府県の知事の間で、補償には財政的な余力がないとの認識で一致したことを明らかにした。その上で、8日の記者会見で、都の方針について「足並みがそろわない現状が浮き彫りになった。歩調を合わせるのはほぼ不可能に近い」と指摘。千葉県の森田健作知事も「名指しされた業種は大変な影響がある」「経済への影響を小さくしたい」などと理由を語った。
一方、兵庫県の井戸敏三知事は見直しについては「適切な内容は追加し、不要な点があれば削除したい」と述べており、今後の感染状況次第では、対応方針の変更についても柔軟に応じる姿勢を見せている。