新型コロナウイルスの感染が拡大する中、共産党が現実路線を強めている。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法の審議では廃案を訴えていたにも関わらず、特措法に基づく緊急事態宣言は事実上容認した。他の野党に対しては、自衛隊や日米安全保障条約など見解の異なる政策を野党連合政権に持ち込まないことを説明するなど、共闘の深化に腐心している。
志位和夫委員長は9日の記者会見で、「補償なき宣言は矛盾を引き起こしている」と強調。政府に対し、外出や営業自粛要請で損失が生じる事業者などに「生活と営業が持ちこたえられる十分な補償」を行うよう求めた。
共産は特措法の採決では反対に回り、志位氏も3月には「人権制限を広範に可能にし、歯止めが極めてあいまいだ」と批判していた。だが、国内でも急速に感染が広がる中、宣言もやむをえないとの立場に変わり、今は自粛に伴う補償に論点を移している。こうした姿勢に特措法に賛成した他党からは「さすがに世論を無視できないのだろう」(立憲民主中堅)と冷ややかな声もあがる。
志位氏ら幹部は3月下旬から、れいわ新選組を除く野党党首らと会談し、野党連合政権が実現した場合の対応を説明した。党綱領に「廃棄」を掲げる安保条約も「維持する」とするなど軟化アピールに躍起になっている。党員減少への特効薬が見つからない中、次期衆院選に向け、野党共闘に望みをつなげざるを得ない事情もある。
ただ、「自衛隊の解消」を明記する党綱領改定などの動きは見えず、他の野党からは「自衛隊を違憲と言いながら連合政権で認めるのはわかりにくい」との声が出るなど、アレルギーの払拭(ふっしょく)には至っていない。(田村龍彦)