【大型Q&A】雇用調整助成金ってどんな制度? 手続き複雑、申請避けるケースも






 新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化した企業による解雇や雇い止めを防ぐため、政府は緊急経済対策で休業手当の一部を穴埋めする雇用調整助成金を拡充した。ただ、制度が複雑で手続きに時間がかかるため、申請が敬遠されて解雇が進むケースもある。論点をまとめた。

 Q 雇用調整助成金とはどんな制度なのか

 A 景気悪化などで事業活動を縮小せざるを得ない場合、従業員を一時的に休業させたり職業訓練を受けさせたりする事業者に対し、休業手当の一部を国が助成する。労働基準法では、企業の責任で従業員を休ませると、賃金の6割以上の休業手当を支払う義務がある。制度を通じて急な解雇を防ぎ、手当の円滑な支払いを促す狙いがある。

 Q 今回、どのように拡充されたのか

 A 4月1日~6月30日を緊急対応期間と位置付け休業手当に対する助成率などを拡大した。通常の助成率は中小企業が3分の2、大企業が2分の1だが、今回は中小企業が5分の4、大企業が3分の2まで引き上げた。一人も解雇をしない事業者にはさらに上乗せし、中小企業は10分の9(大企業は4分の3)とした。これはリーマン・ショック時と同水準だ。正規・非正規を問わず全従業員が対象になる。ただし年間100日、従業員一人当たり日額8330円の限度がある。

 Q 課題はあるのか

 A 手続きに時間がかかることだ。労使協定書や売上高の分かる資料など10種類以上の書類が必要で、中小零細企業が専門家の手を借りずに自力で申請するのは難しい。支給まで2カ月程度かかることも多く、足元の資金不足に迅速に応えられる体制づくりが急がれる。一方、従来求められた「3カ月間の売上高が平均10%以上」減少という条件は「1カ月で5%以上」まで緩和されている。

 Q 申請を避ける企業もあると聞く

 A 助成率が引き上げられたとはいえ企業に一定の持ち出し負担は残る。政府や自治体の営業自粛要請で休業した場合、労基法の休業手当の義務が適用されるか線引きがあいまいで、手当を支払わなかったり大幅に減額したりするケースも報告される。「失業手当のほうが手続きが速い」との理由で、面倒な手続きを避けて従業員を解雇する企業もあり、政府の経済対策が十分に生かされていない。



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