【ニューヨーク=上塚真由】新型コロナウイルスの影響でニューヨーク市の劇場街、ブロードウェーが興行を中止してから12日で1カ月がたった。劇場などでつくる業界団体はすでに6月7日までの閉鎖を発表。感染が爆発的に広がるニューヨークの中でも、観光客が中心の劇場街の再開は一層厳しい道のりとなっている。
ブロードウェーは先月12日、ニューヨーク州による500人以上の集会の禁止措置を受けて41の劇場の全興行を中止。業界団体は当時、1カ月後の再開を目指すとしていたが、今月8日に「最優先事項は観客や、演劇業界で働くすべての人の健康だ」として6月7日までの閉鎖を発表した。
また、ニューヨーク市内で6月7日に行われる予定だった米演劇界最高の栄誉とされるトニー賞授賞式の無期限延期も決まった。
米紙ニューヨーク・タイムズは、業界関係者の話として「閉鎖期間はさらに長引く可能性がある」と指摘。早くても独立記念日の7月4日の週や、もしくは9月7日のレイバーデー(労働者の日)まで再開されない可能性がささやかれているという。
密閉空間での大規模なイベントは、感染防止の観点から最も避けなければならない。さらにブロードウェーの観客には国内外からの観光客が多く、新型コロナの収束後もニューヨークの観光産業が回復するには時間がかかるとの見方があるためだ。クオモ知事は8日の会見で、ブロードウェーの再開見通しについて「人々は劇場に行く前に、いつ職場復帰できるのか、またいつ学校が再開されるのかと聞くだろう」と述べた。
「キンキ・ブーツ」などを手掛けたブロードウェープロデューサーの川名康浩さんによると、2001年の米中枢同時テロの際は「ブロードウェーのあかりを消してはならない」と3日後に再開。組合のストライキで数週間、上演が中断されたこともあったが、前代未聞の事態という。
劇場の閉鎖が続く中、オンラインで作品を発表する動きも出ている。4月11日にはユダヤ教のペサハ(過ぎ越し祭)を題材にした作品が公開された。有名女優のベット・ミドラーら数十人の出演者がそれぞれ自宅で撮影した動画を、製作陣が編集し、外出制限下でも公演を続ける取り組みが話題を呼んだ。
また、全米で約5万1千人の俳優らが所属する労働組合は3月24日、生活が苦しくなった俳優やスタッフのためにファンドを設立し、一般からも募金を呼びかけている。
川名さんは「長期間の閉鎖は厳しい状況だが、ニューヨークの象徴であるブロードウェーの復活が米国、世界の復活につながるように再開に向けて万全の準備をしたい」と語った。