新型コロナウイルスの感染拡大による経済悪化懸念を背景に、金融市場では、「金」などの安全資産に資金が滞留する傾向が強まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)が異例の資金供給に踏み切るなど、コロナショックの沈静化に向けた手は打たれたが、多くの投資家は「痛み止め」(民間エコノミスト)が遅かれ早かれ切れることを不安視し、さらなるリスク回避の動きを強めている。
週明け13日の東京株式市場は、国内の感染者数の増加を懸念した売りが強まった。日経平均株価の終値は、前週末比455円10銭安の1万9043円40銭。下げ幅が500円近くに迫る場面もあった。
東京商品取引所では中東産原油の先物が値下がりし、約1週間ぶりの安値を付けた。原油生産国の連合体「OPECプラス」が協調減産で最終合意したが、減産量が市場の期待を下回った。
一方、金の国際先物価格は約7年半ぶりの高値圏で推移。9日の米ニューヨーク市場では一時、1オンス=1754・50ドルをつけた。国内の金地金店頭価格は13日、40年ぶりに過去最高値を更新した。
ほぼ永遠に価値を失うことがなく、どの国や組織の信用リスクとも結びつくことのない金は究極の「安全資産」とされ、経済の悪化懸念が強まると、投資マネーの逃げ場となる。
市場の不安を鎮めようと、FRBは9日、2兆3000億ドル(約250兆円)に上る新たな資金供給策を発表した。信用格付けの低い社債の購入にも踏み込む異例の措置だ。
エコノミストの豊島逸夫氏は「コロナショックの“痛み止め”であって、平時に戻れば債券は売られる。市場では、すでにコロナ後のマネーの動きが意識され始めている」と指摘する。
そのサインとなるのが、米国債券市場だ。米10年債の利回りは3日時点では0・5%後半だったが、9日には0・7%台前半まで水準を切り上げた。トランプ政権が巨額の財政出動を打ち出したことが影響した。
豊島氏は「安全資産と見なされてきた米国債もリスク資産になる可能性が出てきた。痛み止めの効果が消える7月以降は波乱の相場展開が予想される」と、金に逃げる投資家心理を代弁する。