内閣府は21日、北海道から東北地方北部の太平洋側を震源とする巨大地震の新たな想定を公表した。地震の規模は北海道沖の千島海溝で国内最大のマグニチュード(M)9・3、東北沖の日本海溝でM9・1を想定し、それぞれ最大で高さ約30メートルの大津波が東日本の広範囲を襲うと推計した。いずれも「発生が切迫している」として、防災対策の見直しを急ぐ方針だ。
千島海溝の巨大地震は、東日本大震災(M9・0)や南海トラフで想定された巨大地震(M9・1)を上回る規模。沿岸部における津波の高さは、北海道えりも町の27・9メートルが最大で、同町から根室市にかけて10~20メートル超と予想した。択捉島でも30メートル近くに達する。
日本海溝の巨大地震の津波は岩手県宮古市の29・7メートルが最も高く、青森県八戸市は26・1メートルで、同県以北で東日本大震災を上回る。宮城県は10メートル前後、福島県は南相馬市などで20メートル近くに及ぶ。茨城県や千葉県でも5メートルを超える。
北海道から千葉県までの市町村ごとに津波の浸水域も想定。北海道苫小牧市や仙台市などで内陸まで浸水する。岩手県内については自治体の了解が得られていないとして非公表とした。
広範囲で強い揺れに見舞われ、北海道東部の厚岸町付近で震度7、釧路市や根室市、青森県や岩手県の一部などで震度6強とした。
千島海溝と日本海溝は、いずれも海側のプレート(岩板)が陸側の下に沈み込む場所だ。境界部の断層が動いて巨大地震が繰り返し起きてきたが、千島海溝では17世紀を最後に途絶えている。日本海溝では東日本大震災が起きた際、岩手県以北では断層が動かず発生リスクが残っており、それぞれ起こり得る最大級の地震を新たに想定した。
北海道や東北地方は歴史資料が乏しいため、過去6500年間に18回の津波で運ばれた堆積物を基に震源域や規模を求めた。千島海溝の震源域は北方領土の沖合まで延びる広さで、地震のエネルギーは東日本大震災の2・8倍に達する。
内閣府は大震災で想定外の巨大地震に見舞われた反省から全国で地震想定の見直しを進めてきた。今回は南海トラフ地震や首都直下地震に続くもので、今年度中に被害想定をまとめる。