自民党の二階俊博幹事長(81)の通算在職日数が22日、1359日となり、森喜朗元首相を抜いて歴代2位となった。9月8日まで務めれば「政治の師」と仰ぐ田中角栄元首相を抜いて最長となる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策では「10万円給付」実現へのきっかけをつくった二階氏。その政治力は党内の多くの議員を引きつける一方、軋轢(あつれき)も生んでいる。(広池慶一)
「多くの皆さんのご意見を吸収して、円満に運営していくことが大事だ」
20日の記者会見で歴代2位の感想を問われた二階氏はこう答えた。政府が減収世帯などへの30万円給付から一律10万円給付へと方針転換したことには「自民党は国民の声に寄り添いながら政治を運営している」と語った。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は22日の記者会見で「政府にとっては極めて頼もしい幹事長だ」と持ち上げた。
10万円給付をめぐっては、党内でも実現を求める声が根強かったが、財務省が激しく抵抗。岸田文雄政調会長が安倍晋三首相と30万円給付で合意した後に開かれた6日の政調全体会議では、給付対象が絞られたことに反対論が噴出した。
党関係者によると、この頃、30万円給付について連日、1千件を超える苦情が党本部に殺到した。こうした状況を踏まえ、二階氏は14日、記者団に「一律10万円の現金給付を求める切実な声がある」と発言。これに公明党が乗る形で首相に方針転換を決断させた。
「30万円給付」への不満の高まりと比例するように、二階氏の政治力に頼る動きが増えた。
10日には世論の動向を気にした衆院当選3回の若手が歳費削減を求める提言への賛同者を募り二階氏に提出。二階氏も前向きに応じ、歳費を1年間、2割削減する与野党合意の流れを作った。
また、医師資格を持つ冨岡勉政調副会長らは15日、新たな新型コロナ関連対策本部の設置を二階氏に要望。快諾した二階氏は党本部での看板掛けで「対策の先頭に立っていただきたい」と激励した。
ただ、こうした動きは岸田氏らの神経を逆なでしている。「30万円給付」ではしごを外される形になった上、政調のもとに設けられているのとは別の新型コロナ関連対策本部が頭越しに設置されたためだ。岸田氏は周囲に「政調と違う動きをしたら許さん」と語るなど警戒を強める。政府・与党は追加の経済対策も検討しているが、幹事長室と政調会長室の綱引きは続きそうだ。