【ワシントン=黒瀬悦成】米大統領選は、11月3日の投開票まで半年余りとなり、新型コロナウイルスをめぐる中国への対応が主要争点の一つとして急浮上してきた。再選を目指す共和党現職のトランプ大統領(73)と、民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領(77)は、互いに対中政策を非難しており、どちらが中国に対して強硬であるかを競い合う状況となっている。
トランプ氏は、新型コロナが初感染地の中国湖北省武漢市にある中国科学院武漢ウイルス研究所から流出した疑いがあるとして、情報機関などを動員して「徹底調査」を行うと表明。同時に、中国が初動段階でウイルス情報を隠蔽したせいで感染が世界に拡大したと非難し、責任を追及する構えを打ち出している。
トランプ氏はまた、支持者に献金を求める陣営発のメールで「私は中国に対して厳しいが、退屈なジョー・バイデン氏は弱腰だ」とし、バイデン氏の「中国ファースト、米国ラストの腐敗したたくらみ」に立ち向かおうと呼びかけた。
トランプ氏を支持する最大の政治活動団体「アメリカ・ファースト・アクション」も今月中旬、バイデン氏に「北京バイデン」というあだ名を付けて対中姿勢を非難する意見広告を、選挙の行方を左右する重要州の中西部ミシガンとウィスコンシン、東部ペンシルベニア各州で流し始めた。
バイデン氏は民主党候補指名争いの選挙集会で「中国は競争相手ではない」と発言。トランプ氏が1月31日に中国からの渡航制限の強化を発表した際は「ヒステリックで外国人嫌悪の行動をとるときではない」などと主張し、保守勢力から猛攻撃を受けている。
一方、バイデン陣営は今月19日、「トランプ氏こそ今年1~2月に15回も中国を称賛した」とし、中国の言い分に惑わされて有効なウイルス対策を取らなかったとする動画広告を発表。広告は「渡航制限後も4万人が中国から入国した」と主張するなど、対中強硬姿勢でトランプ陣営に対抗する立場を鮮明にした。
ここへきて両陣営とも中国を争点に据えたのは、新型コロナ危機などを受け米世論に反中感情が高まっていることが背景にある。
調査機関ピュー・リサーチ・センターが21日に発表した全米世論調査結果によると、中国を「好ましくない」と答えたのはトランプ政権が発足した2017年比で19ポイント増の66%。また、「中国の国力と影響力は脅威」だとする回答は91%に上ったほか、71%が「中国の習近平国家主席は信頼できない」と答えた。
それだけに今後、相手に「中国びいき」のレッテルを貼ってイメージダウンを図る動きは、本選の流れにも大きく影響しそうだ。