韓国サムスン電子が狙う2020年の反転攻勢に誤算が生じ始めた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界首位のスマートフォンの販売台数が数千万台落ち込むためだ。スマホは急成長の中国勢に押されているだけに、一段と苦戦を強いられる。足元の業績はスマホとともに2本柱の半導体が好調で支えているが、あてにしている高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム向けの需要減少が顕著になり、半導体事業に影響が出かねない。
スマホ事業で悩ましいのは、年初に発売した旗艦機種「ギャラクシーS20」が期待ほど売れていないことだ。中央日報(日本語電子版)によれば、サムスン関係者の間では歴代のギャラクシーSのうち、最悪の成績を出すのではないかとの懸念が出ている。
新型コロナの影響で韓国国内の販売台数は今のところ、前機種「S10」の80%水準という。海外も同様、需要減とともに生産工場や販売店の休業が相次ぐ。
こうしたことからS20の年間販売台数は、3500万台程度を維持してきた従来製品と比べて大幅に減少し、2000万台にとどまるとの見方が浮上する。
韓国投資証券は、サムスンの今年の全スマホ販売台数を従来見通しより6.8%減の2億8000万台に下方修正した。19年の3億台弱から1000万~2000万台の幅で減ると予想する。
中国華為技術(ファーウェイ)や米アップルなど競合他社も状況は似ているが、サムスンにとって今年を代表する新製品という点で相対的に打撃が大きい。
そもそも、サムスンのスマホ事業の競争力が低下している、との指摘もある。世界最大のスマホ市場である中国は、ファーウェイなど自国メーカーが強く、サムスンのシェアは1%に満たない。世界シェアも13年の26.8%から16年に19.2%、19年は17.5%と下がり続けている。首位は堅持するものの、「ファーウェイにあごの下まで追撃されている」(中央日報)状況だ。