【当世インド事情】都市封鎖で大気汚染が改善「ヒマラヤが見えた」





インドの首都ニューデリーでは、新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)などの影響で大気汚染の改善が進む。昨年11月1日(上)と比べ、今年4月22日(下)では市内を流れるヤムナー川一帯の光景も一変した(ロイター)

 新型コロナウイルスの流行を受け、世界各国がロックダウン(都市封鎖)などの拡大防止措置に踏み切る中、大気汚染が改善されたという報告が相次ぐ。顕著なのが「世界最悪レベル」の汚染で知られるインドだ。あまりの深刻さから「ガス室」とも呼ばれたが、過去20年で最良の状態となっている。経済活動や人の動きが止まったことが思わぬ効果を生み出した格好だ。(シンガポール 森浩)

■インドが「大気汚染ワースト」上位独占

 近年、大気汚染といえば、街中がスモッグで覆われた中国の都市の様子が報じられることが多かった。だが、最近では経済発展にともなってインドが深刻さを増している。特に冬季の空気の悪さについて、デリー首都圏のケジリワル首相は「ガス室と化している」とも表現している。

 家電メーカー「IQエア」(スイス)のまとめによると、2019年の「大気汚染が深刻な都市ランキング」のワースト1位はインド北部ウッタルプラデシュ州ガジアバードだった。年間を通じた大気中の微小粒子状物質「PM2・5」の平均濃度は、1立方メートルあたり110・2マイクログラム。日本の環境省は70マイクログラム以上を「健康影響が生じる可能性が高くなると考えられる」としており、高い数値であることがうかがえる。

 ランキングでは、大気汚染が深刻な上位30都市のうち21をインドが占める。ニューデリー(デリー)は5位に入っており、「世界一大気汚染が進んだ首都」となっている。

 ランキングには中国の都市も入っているが、IQエアは「多くの主要都市の大気の質は改善している」と分析している。

■都市封鎖で劇的改善

 インドで大気汚染を示す数値が改善したのが、新型コロナ対策として都市封鎖が始まった3月25日以降だ。モディ政権は、食料品販売や銀行など生活に必要なサービスを除いてほとんどの職場を閉鎖し、鉄道や地下鉄など公共交通機関の運行も停止した。

 米航空宇宙局(NASA)の4月上旬のデータによると、インド北部の大気汚染がこの時期としては「過去20年で最低の水準」になったという。ロイター通信も都市封鎖以降のニューデリーのPM2・5の平均濃度は44マイクログラムで、まれに見る「良好」と報じた。

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