韓国務安国際空港で発生したチェジュ航空機墜落事故。乗客乗員の命を奪ったこの悲劇の原因究明が進む中、新たな映像が公開され、事故の真相に注目が集まっている。本記事では、事故当時の状況、公開された映像の分析、そして専門家の見解を通して、事故原因の可能性を探る。
事故発生時の状況:バードストライクとメーデー
2025年1月29日午前8時57分頃、務安空港管制塔はチェジュ航空機に鳥類衝突(バードストライク)の警告を発信。そのわずか2分後、操縦士は着陸進入中にバードストライクに見舞われ、遭難信号「メーデー」を発信。復行を試みたものの、2度目の着陸で胴体着陸となり、空港内の構造物に衝突、爆発炎上した。この事故で乗客179名と乗務員2名が命を落とした。
alt韓国務安国際空港の事故現場。墜落事故の悲惨さを物語る。
公開された映像が示唆するもの:巨大な鳥の群れ
韓国SBSテレビが公開した防犯カメラの映像には、事故機周辺を覆う黒い雲のような物体が映っている。この物体について、法映像分析研究所のファン・ミング所長は「雲や煙ではなく、鳥の群れである可能性が極めて高い」と分析。その規模は、旅客機の10倍以上にも及ぶ巨大なものだったと推定されている。
巨大な鳥の群れと衝突の瞬間
映像では、鳥の群れが旅客機の進行方向前方に広がり、通過後に再び大きな雲状にまとまる様子が確認できる。これは鳥の群れのV字隊形の特徴と一致し、その規模は旅客機の胴体サイズの10倍以上と推定されるという。ファン所長は「鳥の群れは蛇のような形状で、旅客機はその10分の1程度の大きさ。数百メートル以上の規模に達する可能性がある」と指摘。
専門家の見解:両エンジンへの影響
事故当時、バードストライクにより旅客機の両エンジンに異常が発生したと推定される。1~2羽ではなく、巨大な鳥の群れの相当数がエンジンに吸い込まれた可能性が高いとSBSは報じている。航空工学の専門家である東京大学大学院の山田教授(仮名)も「これだけの規模の鳥の群れとの衝突は、エンジンに深刻なダメージを与える可能性が高い」と指摘。エンジン停止や出力低下を引き起こし、操縦不能に陥った可能性が考えられる。
alt事故当時の状況を再現したイメージ。巨大な鳥の群れが旅客機に襲いかかる。
今後の調査と安全対策の強化
事故原因の究明には、更なる調査が必要だが、今回の映像公開は、バードストライクが事故の主要因であった可能性を強く示唆している。今後、航空業界では、バードストライク対策の強化が改めて求められるだろう。レーダーシステムの改良、鳥類の生息状況の把握、そしてパイロットへの訓練など、多角的な対策が不可欠となる。