※この記事は、月刊「正論6月号」から転載しました。ご購入はこちらから。
米国における新型コロナウイルス感染の中心地、ニューヨーク市の状況は、日本でも連日トップニュース級で伝えられていると聞く。世界最多の死者数、医療崩壊の危機や二千万人超の失職、貧困や人種問題…。米国はまさに「ウイルスとの戦い」のただ中で、日本の友人たちからは「ニューヨーク、大丈夫なの?」とたくさんのメールや電話をもらう。本稿ではこうした深刻な問題を掘り下げるのではなく、あえて目先を変えて、コロナ禍のマンハッタンで一人暮らしを送る四十代記者の体験記と生活の様子を報告する。
意外に厳しくない外出制限
「都市封鎖」の一例として挙げられるニューヨーク市の外出制限は、それほど厳しくない。
三月二十二日夜から医療機関、食料品店など「必要不可欠」な業種を除いて、すべての従業員の在宅勤務が義務付けられた。
市は「少人数でも不要な集まりを避けること」「外出の際は、他人との距離を、最低でも六フィート(約一・八メートル)保つこと」を求めているが、外出は禁止していない。散歩や運動のため公園に行くことは許されているし、スーパーに行けば、食材は何でもそろっている。トイレットペーパーや消毒液、マスクはいまだ入手困難だが、スーパーの品ぞろえは、買いだめする人が相次いだ三月中旬と比べると、むしろ豊富になった印象だ。
オーガニック食品を展開する地元で人気の「トレーダージョーズ」や「ホールフーズ・マーケット」では、買い物客が六フィートずつ間隔を空けて並んでいるため、百メートル以上の行列になることも。比較的空いている雨の日を狙って買い物に出かけるようにしているが、人気のスーパーは入店までに三十分はかかる。そんな中、マンハッタンに十店舗ほどある日本食スーパーは比較的空いているので重宝している。