【正論6月号】中国の「コロナ外交」にご用心 産経新聞台北支局長 矢板明夫





新型コロナ感染防止のために武漢に来た医療ボランティア(AP)

 ※この記事は、月刊「正論6月号」から転載しました。ご購入はこちらから

 中国はこれからどうなるのか。

 この問題を考えるにあたって、今、しっかりと見据えておく必要があるのは、中国によるいわゆる「コロナ外交」です。世界中が現在苦しんでいる新型コロナウイルスの発生源は紛れもなく中国の武漢でした。ウイルスは瞬く間に世界中を席巻しています。

 ヨーロッパもそうです。日本もアメリカも、そしてイスラム圏に至るまでその猛威に苦しめられています。マスクも人工呼吸器も、そして防護服も足りません。そうした必需品の多くは「世界の工場」と呼ばれる中国で製造され、中国に依存してきたからです。

 マスクを例に取りましょう。民生品のマスクは製造にそれほど難しい技術を要するものではありません。ですから、日本や欧米など先進国では生産拠点を早々と海外に移し、国内ではほとんど生産していませんでした。ところが、今回、「マスクが足りない」となって「早く確保できないのか」と焦りが生まれたり政府を突き上げる動きが出てきています。

 そこに中国の関係者が「困っていますね?

 友情の印に協力しましょう。私たちとマスクの取引をしませんか」と近づいてきます。まるで「助けてあげましょう」と言わんばかりで、サンタクロースか救世主のような振る舞いです。

 しかし、これは実に腑に落ちない話です。第一、もとはといえば、国際分業、役割分担のもとで中国でマスクの生産が行われていたからです。飛行機はアメリカ、自動車は日本やドイツ、アメリカ、韓国といった具合に分業体制が確立されていたに過ぎません。中国はそのうちの「マスク担当」だったというだけの話です。

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