【ロンドン=板東和正】欧州諸国は、新型コロナウイルスの感染拡大の抑制に効果が見られたとして外出や経済活動の制限については緩和する一方で、非常事態宣言の解除には慎重な姿勢を見せている。感染拡大の「第2波」を防ぐため、政府が行動制限の緩和後も引き続き厳しい対策を実施できる権限を維持したい考えがあるとみられる。
スペイン議会は6日、3月14日に宣言した当初の非常事態の期限を5月9日から2週間延長することを承認した。スペインの非常事態宣言は憲法の緊急事態条項に基づき、国民の自由移動を制限する権限を政府に与えた。政府は非常事態宣言で、経済活動の停止措置や、生活必需品の買い物などを除く外出を原則禁止する措置を適用した。
スペイン政府は4日から理髪店など予約制店舗の再開を容認。11日から小規模商店、屋外レストランなどに対象を広げ、6月末までに飲食店、劇場などの再開を認める。
一方で、サンチェス首相は非常事態宣言について「(早期の)解除は許されない完全な誤りとなる」と延長を強く主張。欧州政治を研究する専門家は「スペイン政府は景気悪化を防ぐため経済や外出の制限は段階的に緩和させるが、感染が再び拡大しないよう政府が新たな対策を迅速に実行できる態勢を維持したいのだろう」と分析する。
フランス政府も2日の閣議で、今月末が適用期限だった「公衆衛生の非常事態」の2カ月延長を決めた。「公衆衛生の非常事態」法は、経済対策や外出制限で政府の迅速な措置を可能にするため3月23日に公布されたものだ。
同政府は新型コロナ対策で実施している外出禁止令は5月11日から段階的に解除する方針を表明している。「公衆衛生の非常事態」法の延長法案は新たに感染者の強制隔離について定められており、政府は11日以降、感染再発を防ぐために当局の隔離命令の拘束力を強める。
欧州連合(EU)で最も早い1月31日に非常事態を宣言したイタリアは7月31日まで非常事態宣言を継続する。イタリア全土で3月10日から続いていた都市封鎖は今月4日、緩和され、製造業や建設業が操業を再開したが、政府が州を統合する形で危機対応を可能にする同宣言は当面、解除されない見通しだ。
他方、ハンガリーの議会は3月30日、非常事態を、オルバン首相が無期限で延長できる法案を可決した。非常事態下では学校の封鎖や市民の移動制限などの措置をとることができ、継続には15日ごとの議会承認が必要だったが、今後は議会のチェックは働かなくなる。EUのフォンデアライエン欧州委員長は、「行きすぎた施策を懸念している」とハンガリーを名指しで批判した。