IS、イラクで再び攻勢に コロナ混乱の隙つく


 【カイロ=佐藤貴生】イラクでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が治安部隊を相次ぎ攻撃し、英BBCテレビ(電子版)によると、5月に入り少なくとも18人が死亡した。イラクは中央政界の迷走が続くなかで新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われており、混乱の隙を突いてISが勢力を回復している可能性がある。

 イラクでは5月上旬、北部サラハディンやキルクーク、中部ディヤラの各県で検問所などが襲撃され、ISメンバーと治安部隊が交戦した。BBCによると、イラクでISが犯行声明を出した4月の事件は113件と、1~3月の1カ月平均(49件)の倍以上に達しており、地元メディアはISの攻撃が「新たな段階」を迎えたと伝えた。

 2014年にイラク北部などで勢力を広げたISは、米軍やイランと連携するシーア派民兵組織の攻撃で17年末に支配地域を失った。その後は分散して潜伏し、治安部隊の奇襲や内通者の誘拐、市民の金品強奪などを行っているという。

 イラクでは昨年10月、中央政界の汚職蔓延(まんえん)や経済低迷に反発する抗議デモが始まり、アブドルマハディ首相が辞意を表明。その後2人が首相候補に指名されたがいずれも組閣を断念し、3人目の情報機関トップ、カディミ氏率いる政権が今月上旬、ようやく正式に発足した。ただ、閣僚ポストは埋まらず、米・イランの主導権争いも続いている。

 イラク政界に詳しい在バグダッドの男性は「財政難や米、イランとの関係など課題は山積している。政権が発足したとしても短命に終わるのではないか」とし、混乱は続くとみる。ISが勢力を盛り返す余地は今後も広がりそうだ。

 ロイター通信によると、エジプト北東部シナイ半島で4月末、同国軍の車両が爆破されて兵士10人が死傷する事件があり、ISが犯行声明を出した。ISはモザンビークで治安部隊などが襲われた最近の複数の事件でも犯行を認めた。新型コロナの感染防止で各国政府が浮足立つ現状は、ISが浸透する格好の機会となっているようだ。



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