イスラエル政府閣僚の一人、アミハイ・エリヤフ文化遺産相が「ガザ地区に飢餓は存在しない」と主張しつつ、「我々が彼らを殺しているのは事実だ」と発言し、大きな波紋を広げている。この発言を受け、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は直ちにエリヤフ氏が自身の政府の公式見解を代弁するものではないと強調し、事態の沈静化を図っている。
イスラエル遺産相の衝撃的な発言内容
現地時間24日、アミハイ・エリヤフ遺産相は超正統派ユダヤ教系ラジオ局「コル・バラマ」のインタビューに応じ、ガザ地区の現状について驚くべき見解を述べた。同氏は「政府はガザ地区を破壊するために全力を尽くしている」と述べた上で、「ガザ地区に飢餓は存在しない」と断言。さらに、「我々が彼らを殺しているのは事実だ。我々は怪物を殺す。我々を脅かす者は殺す」と強調した。また、飢えた子どもたちの写真が公開されることに対しては、「その隣にはちゃんと食事をする太った男がおり、彼らは食糧を配ることに全く問題はない」と主張し、食糧供給が滞っているのは彼らの責任であるかのような姿勢を示した。
イスラエル人がガザの子どもたちの窮状を憂慮すべきかという質問に対しては、「どの国も敵に食糧を提供することはない」と断言し、英国がナチス・ドイツに、米国が日本に、ロシアがウクライナに食糧を提供しなかった例を挙げ、「彼らの飢えを我々が解決しなければならないのか?狂気の沙汰だ」と述べた。最後に、「全世界が心配するように放っておけ」と突き放し、将来的には「ガザ地区全体にユダヤ人が住むことになるだろう」とガザ占領を正当化した。
ガザ地区の深刻な人道危機と国際社会の懸念
エリヤフ遺産相の発言とは裏腹に、ガザ地区の食糧難は極めて深刻化している。ガザ保健部は22日、90万人もの子どもが飢餓に直面し、そのうち7万人以上がすでに栄養失調の症状を示していると発表した。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務総長も、ガザ地区の封鎖が引き起こした「人為的な大量飢餓」状況だと指摘し、この状況を招いたイスラエルを批判している。
イスラエルは3月初めから国際救援団体の人道支援物資の搬入を厳しく制限していたが、5月末になって米国主導のガザ人道主義財団(GHF)の配給網を単一窓口として開設し、住民への物資供給を統制している。このような状況下で、子どもや高齢者だけでなく、ガザ地区の全住民が飢餓の危機に晒されている。5月末以降、ガザ地区で餓死した住民は113人に上り、このうち80人以上が子どもであると報告されている。
ネタニヤフ首相と野党からの反応
エリヤフ遺産相のこの発言を受け、国際的な批判が高まることを懸念したネタニヤフ首相は、25日午前0時過ぎにX(旧Twitter)の首相室公式アカウントを通じて英語で声明を発表し、事態の鎮静化に乗り出した。首相は声明の中で、「(エリヤフ遺産相は)私の率いる政府を代弁するものではない。彼は戦争遂行を決定する安保閣僚の一員でもない」と強調した。しかし、エリヤフ遺産相に対する具体的な懲戒や処罰については言及しなかった。
一方、イスラエルの主要野党であるヤイル・ラピド野党代表は、エリヤフ遺産相の発言を強く非難した。ラピド氏は、「イスラエルが血と死を神聖視する長官で構成された過激派少数政府の指揮を受ける限り、テロとの戦争が正当だということを世界に認めさせることはできないだろう」と述べ、イスラエル兵士たちが戦い、命を落としているのは「民間人を皆殺しにするためではない」と批判した。
ガザ地区の人道危機に対する国際社会の関心が高まる中、イスラエル政府閣僚からのこのような発言は、今後の情勢にさらなる複雑さをもたらす可能性がある。
参考文献:
- Source link
- CNN
- The Times of Israel
- 世界保健機関(WHO)公式発表
- ガザ保健部報告