全人代 新型コロナからの「V字回復」揺らぐ中国経済 






 【北京=三塚聖平】中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)が22日に北京で開幕し、新型コロナウイルス蔓延(まんえん)で打撃を受けた中国経済の立て直しが課題となる。習近平指導部は経済正常化へ号令を掛けているが世界的な感染拡大に伴い当初もくろんでいた「V字回復」のシナリオは瓦解(がかい)しつつある。米国との貿易戦争再燃の懸念もにわかに強まり、中国経済の先行きに不透明感が漂う。

 「昨年の状況とは今も明らかにかけ離れている。どこも一緒だよ」

 北京市内の自動車販売店が集まる地域で、韓国車を扱う男性店員の亢(こう)さん(27)が厳しい表情を見せた。新車が並ぶ広い店内に客の姿はまばらだった。

 新型コロナ直撃で中国の消費は大打撃を受けた。中国自動車工業協会によると2月の新車販売は前年同月比約8割減。政府の販売補助金支給などで4月は22カ月ぶりに前年実績を上回ったが、同協会は2020年通年の販売は海外で感染拡大が続けば前年比25%減という悲観シナリオを示す。

 政府が主導する工業生産の回復ぶりと比べ、消費動向を示す小売売上高の勢いは鈍い。北京市内で働く40代の女性は「買いたいものは沢山あるが、感染するのが怖いので人が多い場所はまだ避けている」と話す。

 中国は当初、早期に国内感染を押さえ込み景気を急回復させる青写真を描いたが、各国での感染拡大による世界経済の悪化懸念で計画に狂いが生じた。4月の貿易統計(ドル建て)で輸出は4月に4カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じたが、足元では世界的な需要減で輸出受注のキャンセルが増えた。急回復した工業生産の鈍化も懸念される。

 習指導部も危機感を強めており、全人代で景気刺激策が強調されるとみられる。ただ、08年のリーマン・ショック後のような世界経済の牽引(けんいん)役までは期待できないという見方が強い。

 また、中長期的な懸念材料として急浮上するのがトランプ米政権との対立だ。

 米中両国でビジネスを行う北京の日系メーカー幹部が「米中対立が激化し、中国事業強化の話題はトランプ政権を刺激する恐れがあるので慎重になっている」と打ち明ける。

 米商務省が15日に中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への輸出禁止措置強化を発表して緊張が高まっているが、米中対立が再び激化すれば中国経済への逆風が増すのは避けられない。



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