ロシア製造業活動が急激に縮小、経済減速の兆し鮮明に:PMIデータ示す

2025年6月、ロシアの製造業活動が大幅に縮小し、同国経済の減速の兆候が鮮明になりました。この減速は、需要低迷とルーブル高が原因とされ、輸出や雇用に影響が出ています。これまで戦時支出で支えられてきたロシア経済ですが、最新データは勢いの低下を示唆し、その持続可能性が問われています。

ロシアのプーチン大統領:製造業活動の縮小と経済減速の中でロシアのプーチン大統領:製造業活動の縮小と経済減速の中で

ロシア製造業PMIが示す活動縮小の詳細

S&Pグローバルによると、6月のロシア製造業購買担当者景気指数(PMI)は47.5と、5月の50.2から低下し、2022年3月以降で最も急速な縮小を記録しました。報告では「6月に操業状況の新たな悪化を示唆」としています。この落ち込みの主因は新規受注の減少です。企業や消費者の購買意欲低下に加え、ルーブル高によるロシア製品の輸出競争力減退が背景にあります。その結果、従業員削減ペースは2022年4月以降最速、資材仕入れも同年3月以降最大幅で削減されています。世界経済の先行き不透明感から、製造業者の景況感・信頼感は2022年10月以降最低水準に落ち込んでいます。

「予算のアンフェタミン」成長の限界か

今回の最新PMI調査結果は、ウクライナ侵攻後数年間のロシア経済の「レジリエンス」(回復力)と対照的です。制裁下でも経済崩壊を回避したかに見えましたが、多くのアナリストは、その回復力が巨額な戦時政府支出による一時的な効果であり、長期的に持続不可能と指摘していました。欧州政策分析センターのシニアフェローであるアレクサンダー・コリアンドル氏は、2025年6月の報告会でこれを「予算のアンフェタミン(覚せい剤)による成長」と表現。政府の巨額支出と予算規律の緩和が、制裁の影響を克服する一助となったと述べました。

景気後退の瀬戸際との警告と公式統計

一方で、2023年末の過熱兆候(中央銀行の警告、高インフレ、高金利約20%)を経て、急激な減速の兆しが顕著になっています。2025年6月には、ロシア経済開発貿易大臣のマクシム・レシェトニコフ氏が、ロシア経済は「景気後退の瀬戸際にある」と警告しました。ロシアの公式統計機関である国家統計局(Rosstat)のデータによると、2025年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比1.4%へと大幅に減速(前年第4四半期は4.5%、2024年通年は4.3%)。コリアンドル氏は、「これは管理された減速なのか、それとも深刻な落ち込みなのかはまだ分からない。しかし、経済が鈍化していることは明らかだ」と結んでいます。

総じて、最新データはロシア製造業の急激な縮小と経済減速の兆候を明確に示唆しています。戦時支出による見かけ上のレジリエンスの持続可能性には疑問符がつきます。この減速が今後のロシア経済にどう影響するか、専門家と共に引き続き注視が必要です。

参考資料:

  • S&P Global (S&Pグローバル)
  • Center for European Policy Analysis (欧州政策分析センター)
  • 国家統計局 (Rosstat)
  • Yahoo News Japan (オリジナル記事)