【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権は22日までに、「中国に対する戦略的アプローチ」と題した報告書を議会に提出した。報告書は、中国が自由主義や人権尊重などの米国の価値観に挑戦していると指摘し、中国の覇権的行動に対するため日本など同盟国との連携を重視していく方針を打ち出した。
報告書は「中国は経済、政治、軍事力を拡大し、米国の死活的利益を傷つけている」と非難し、こうした動きに対抗するため「競争的な取り組み」に重点を移し、中国と「選択的で結果志向」の関与を進めていくと指摘した。
また、対中関係の諸懸案で外交活動による成果を上げられない場合は「圧力を強化し、米国の利益を守る行動を取る」と警告し、中国に厳然とした姿勢をとることを明確にした。
米国が1979年の国交正常化以降、中国が米国などとの関与を深めていけば中国が政治・経済改革を進め、「建設的かつ責任ある世界の利害関係者」なるだろうとの認識は期待外れに終わったとも指摘。その上で、中国は現行の「自由で開かれたルールに基づく秩序」を不当に活用し、国際システムを自国に都合の良い方向に改変しようとしているとも批判した。
同盟・パートナー諸国・地域との関係では、日本の「自由で開かれたインド太平洋構想」に加え、東南アジア諸国連合(AESAN)、インド、オーストラリア、韓国、台湾がそれぞれ掲げる地域戦略と連携していくとした。
中国が軍事力の強化を進めている問題に関しては、「力による平和の維持」の考えの下、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、戦略原潜、戦略爆撃機で構成される「核の三本柱」の近代化を優先させ、中国からの攻撃を抑止する一方、中国が保有する中距離核戦力を含めた核軍縮交渉に応じるよう促していくとした。
香港については「約8万5千人の米国民と1300以上の米企業が存在するなど、米国は重大な権益を有している」と強調し、中国に香港の「高度の自治と法の支配、民主的自由」を尊重するよう要求した。