中国指導部、香港への国家安全法導入を昨年10月に準備





27日、香港で警察官ともみ合いになる反政府デモの参加者たち(ロイター)

 【香港=藤本欣也】中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は28日、国家政権転覆行為などを禁じた「国家安全法」を香港に制定する議案を採択するが、香港への同法導入は昨年10月の時点で決まっていた。習近平指導部はそれ以降、周到に準備を進めてきたことになる。

 国家安全法の香港導入は、昨年10月下旬に開かれた中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第4回総会(4中総会)で決定された。党の最高指導部で香港政策を担当する韓正・副首相が今月23日、香港の全国政治協商会議委員らと面会したとき明らかにした。

 4中総会前の昨年10月1日には、香港で大規模な反中デモが起きている。

 共産中国が建国70周年を迎えたその日のデモでは、「中国の滅亡と習近平(国家主席)の死を願う」と書かれたビラがまかれた。遺影仕立ての習氏の写真も路上に張り付けられ、デモ参加者らが踏みつけていた。

 いずれも中国本土では政権転覆容疑などで即刻逮捕される重大な犯罪行為だ。中国側が強い危機感を抱き、国家安全法導入の契機になった可能性がある。

 4中総会後から今月22日に全人代が開幕するまで、習指導部は導入に向けて着々と布石を打っている。

 今年1、2月には、中国政府で香港問題を担当する「香港マカオ事務弁公室」と、香港出先機関の「香港連絡弁公室」の両トップをそれぞれ交代させた。特に香港マカオ事務弁公室の主任に就いた夏宝竜氏は、習氏が浙江省トップの党委員会書記だった2000年代に副書記を務めた、習氏の元腹心である。

 その夏氏は10年代に、浙江省の2千を超すキリスト教会で十字架を撤去するなどの宗教弾圧を行った“武闘派”として知られる。

 今年4月18日には、香港警察が民主派の主要メンバーら15人を一斉逮捕。同19日には、香港政府が中国側の圧力を受けて基本法(ミニ憲法)の解釈を変更し、両弁公室が香港に対する「監督権」をもつことを容認している。今後、夏氏らは国家安全法と「監督権」を使って、香港への介入を強めていくもようだ。



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