【北京=三塚聖平】中国は28日に閉幕する全国人民代表大会(全人代)の期間中に「中国ウイルス起源論」への反論を積極化させた。米国が新型コロナウイルスの起源や対応で対中批判を強めていることに対し、流出が疑われる湖北省武漢市の研究所長は国営メディアに登場し、抗弁を試みた。ウイルス蔓延(まんえん)をめぐって各国に広がる「中国責任論」を打ち消す狙いがあるとみられる。
中国科学院武漢ウイルス研究所の王延軼(おう・えんいつ)所長は24日に報じられたインタビューで、同研究所からウイルスが漏れ出たという見方を「完全な捏造(ねつぞう)だ」と強く否定した。トランプ米政権が「感染源」と指摘して世界が注目している研究所だ。取材を行ったのは国営中央テレビの海外放送を手掛ける「中国環球電視網(CGTN)」だった。
同研究所の研究員、石正麗(せき・せいれい)氏も25日に報じられたCGTNの取材で、1月12日には世界保健機関(WHO)にウイルスの遺伝子情報を伝えたと答えた。中国が情報公開を遅らせたといった批判を否定する狙いがあるとみられる。石氏はコウモリの保有ウイルスの研究で知られ、一時はインターネット上で「秘密情報を持って海外に逃げた」といった情報が広がっていた。
中国側が強く警戒しているのは、新型コロナに関して中国に損害賠償を求める動きが米国などで広がっていることだ。王毅(おう・き)国務委員兼外相は24日に全人代に合わせて行った記者会見で「中国は他国と同じ被害者だ」と主張し、損害賠償の動きを牽制(けんせい)している。
習近平国家主席は24日に全人代の湖北省代表団会議に参加し、「湖北人民、武漢人民は感染症の予防・抑制で重大な貢献をし、巨大な犠牲を払った」と発言した。また、李克強首相は22日の政府活動報告で「比較的短時間のうちに感染症を効果的に抑制できた」と自賛した。
国政助言機関、人民政治協商会議(政協)は27日に閉幕し、汪洋(おう・よう)政協主席は「感染症との偉大なる戦いから、力と確固たる自信をくみ取らなければならない」と強調した。