【ワシントン=黒瀬悦成】ポンペオ米国務長官は27日、中国が全国人民代表大会(全人代)で香港市民の基本的人権を制限する「国家安全法」を香港に導入する議案を28日に採択する予定であるのを受け、香港では「高度の自治」が維持されておらず、米国が香港に認めてきた優遇措置を続けるに値しないと議会に報告した。
報告は、同法が導入されれば米国が香港への優遇措置を撤廃する用意があると中国に警告を発する意図があり、中国に土壇場での翻意を迫った。
ポンペオ氏は声明で、中国政府による国家安全法制導入は「香港の自治と自由を根本的に損なう」と批判した。香港の現状については「理性ある者であれば、香港が高度の自治と維持しているとは誰も主張できないだろう」と指摘し、「中国政府は香港に中国の規範を当てはめようとしている」と非難した。
同氏はまた、「米国は、かつて約束された自治を否定する中国共産党体制と戦う香港の人々を支持する」と強調した。
ポンペオ氏による議会への報告は、昨年11月に制定された香港人権民主法に基づく措置。同法は、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」を中国が順守しているか国務省に毎年検証するよう義務付けている。
同法はまた、中国が香港の自治を侵害していると判断された場合は、米国が1997年の香港返還後も香港に対して実施してきた関税やビザ(査証)発給などの優遇措置を見直すとの内容も盛り込まれている。
トランプ大統領は、香港をめぐる対中制裁措置を週内に発表するとしており、どこまで踏み込んだ措置をとるかが注目されている。