政府は閣議決定した令和2年度第2次補正予算案で、中小企業に対する資本注入を打ち出した。新型コロナウイルスの影響で経営に打撃を受けた中小企業に対し、政府系金融機関などが優先株を引き受けて財務基盤の強化を促すものだ。
新型コロナとの戦いは長期化が必至だ。当面は政府系の緊急融資で乗り切っても、売り上げ減少が続けば自己資本が毀損(きそん)し、債務超過に陥りかねない。そうなれば銀行から新規融資が受けられず、経営破綻する恐れがある。
地域における連鎖倒産を防ぐには、政府による資本支援が欠かせない。地方銀行などとも連携し、迅速な支援に取り組んでほしい。資本注入に向けた具体的な基準づくりを急ぎ、貴重な産業基盤を守らなければならない。
新型コロナに関する政府の企業向け支援は、政府系金融機関などによる実質無利子・無担保の緊急融資を中心に進めてきた。だが、緊急事態宣言が全面解除された後も、地方の観光業や宿泊業、飲食業などの経営悪化には歯止めがかかっていない。
こうした分野は中小・小規模事業者が多く、財務基盤は弱い。売り上げ減による赤字が続けば、自己資本も減少し負債が資産を上回る債務超過に転落する。厳しい環境を乗り越えるには財務基盤の強化が不可欠であり、政府が資本注入を準備するのは当然だ。
政府系金融機関や官民ファンドを通じ、中小企業などが発行する優先株を引き受ける。借り入れの一部を資本として算入できる劣後ローンも活用するという。地方の中核的な中小企業を守るには、機動的な資本注入が欠かせない。
懸念もある。具体的な資本注入の基準はこれからだ。政府は今夏にも新たな官民ファンドを設立予定というが、新型コロナに直撃された地方企業などの経営は厳しさが増している。悠長に構えていては、時間切れで経営破綻に追い込まれる企業も出てくる。
公的資金を使うため、厳しい審査を求める声もある。将来的な返済は必要だが、今は非常事態である。まずは地方の雇用を確保するためにも、中核的な中小企業の支援に全力を挙げるべきだ。
そのうえで今回の資本注入を通じ、中小企業に生産性向上を促すことも肝要だ。同時に地方銀行の目利き力も高めていきたい。