新型コロナウイルスの感染拡大による休業や収入減で、飲食店をはじめとする個人事業主や中小企業の家賃負担が深刻化する中、賃貸人であるオーナーも「コロナ滞納」に対する不安にさらされている。国は個人事業主や中小企業への家賃補助の拡充を進めているが、オーナー側に対する支援策は少ない。家賃の減額を求める声は強まっており、独自にオーナー側への支援に乗り出す自治体も出てきた。(本江希望)
「家賃の減額要請があったが、どうすればいいか」「オーナー側への助成金はあるか」-。不動産に関するトラブル解決をサポートするNPO法人「日本地主家主協会」(東京都新宿区)には、オーナー側からの家賃に関する相談が届く。
理事長の手塚康弘さん(44)は「賃借人から減額の申し出があった場合、減額しても生活に支障がない場合は手を差し伸べることも必要だと思う。ただ、家賃だけで生活する人や、借入金の返済やリフォームの出費などで余裕がない人も多い。それぞれが置かれている状況で判断してほしいと伝えている」
オーナー側が受けられる直接支援は少ない。新型コロナの影響で売上高が大幅に減少した中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円を支給する政府の持続化給付金や、固定資産税の減免などの税制措置が該当する。
「もっとオーナー向けの直接支援が拡充されたら、家賃の減額を受け入れるオーナーも増えてくるのではないか。賃貸人と賃借人、両方向への支援が必要だ」と手塚さんは指摘する。
一方で、独自に店舗などのオーナー側に支援を行う自治体もある。
都内では、新宿区が5月7日から店舗などの家賃を減額した賃貸人に対して1物件当たり月額最大5万円の助成を行う「店舗等家賃減額助成」を始めた。担当の楠原裕式(ひろのり)副参事によると、1日時点で120件の申請書が届いており、電話や窓口での相談件数は約1400件に及ぶという。