新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が全国で解除され、ようやくシネマコンプレックス(複合映画館、シネコン)など首都圏の映画館も、感染対策を取りながら再開され始めた。この間の休業と新作公開延期で興行収入は大打撃を受け、歴史ある米アカデミー賞も選考基準の変更を余儀なくされた。未曽有の荒波の中での再スタートとなっている。(水沼啓子、石井健)
映画館の業界団体である「全国興行生活衛生同業組合連合会」(全興連)は5月、新型コロナ感染拡大予防のガイドラインを作成。密集を防ぐため前後左右の席をあけることや、チケット購入時などは最低1メートルの間隔をあけた整列を促すことなどを映画館に求めている。
全興連によると、当面は舞台挨拶など飛沫(ひまつ)感染につながるような上映会はしない。また、密接防止のため列ごとの退席などを行うが、それには時間がかかるため、上映回数が減ることも予想されるという。
◇
「日本映画製作者連盟」(映連)によると、東宝や松竹など大手映画配給会社12社の映画の興行収入は、新型コロナ感染拡大の影響が出始めた2月以降、減少し続けている。
特に緊急事態宣言で全国の映画館が休業した4月は総額約6億8800万円で、約184億6500万円だった昨年のわずか3・7%と「壊滅的な状況」(映連)だ。5月もほとんど変わらないとみられる。映連関係者は「今年の興行収入は(過去最高を記録した)昨年と比べて、2、3割減から半減と予想される」と話し、7、8月の夏休みシーズンに望みを託す。
シネコン大手のTOHOシネマズは5日から1都3県の23館の営業を再開するが、戸嶋雅之常務取締役(56)は「当面は、映画館が“安全”であることを訴えていくことが大切」との認識を示す。