新型コロナウイルス感染拡大による国の緊急事態宣言を受けて休館していた坊っちゃん劇場(愛媛県東温市)で7日、「おかやま桃太郎伝説 鬼の鎮魂歌(レクイエム)」の上演が始まった。都市部の劇場ではまだ上演の見通しが立たない中、地方の強みを生かす形で全国の劇場で最初のスタートとなった。
緊急事態宣言が解除され、県内で1週間余り感染者が確認されなかったことなどから開幕に踏み切った。452席ある客席を100席に制限し、観客は一方通行で移動。公演中盤の休憩時間には大型装置で換気を行う。19日以降は客席制限を200席にする。
同劇場では平成18年の創設から毎年、四国や瀬戸内海ゆかりの物語をモチーフとしたオリジナルミュージカルを創作、上演している。今回は脚本・羽原大介さん、演出・錦織一清さん、音楽・岸田敏志さんによる作品で、古代の吉備と大和を舞台に、桃太郎と鬼を主人公に平和のはかなさと尊さを描いている。見どころは激しいアクションと殺陣(たて)。
4月11日に開幕する予定だったが、上演の延期で全国から集まった出演者13人は県内で自粛生活を余儀なくされていた。桃太郎役の南里双六さんは「待ちに待った開幕。お客さんとの一体感が全身を駆け巡りました」と笑顔を見せた。観劇した40代の男性会社員は「上演中は泣きっぱなしで、演劇文化の希望がともされたような気持ちになりました」と感動した様子だった。
上演は来年3月中旬までで、今年12月には岡山県内での出張公演も予定している。