令和2年度第2次補正予算が成立した。民間に委託した「持続化給付金」事業をめぐっては、運営体制が不透明だと野党が追及したが、具体的な税金の無駄遣いや不正は明らかにならなかった。ただ、経済産業省から事業を受託した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が電通に再委託していた構図のわかりにくさが批判され、同省には委託事業の透明性確保という重い“宿題”が残った。
経産省は、協議会や電通など多くの事業者の連携を「コンソーシアム(共同事業体)」と位置づけ、事業の執行に有効だと説明したが、野党は「協議会には実体がないのではないか」と主張し、国会などでの論戦はかみ合わなかった。また、協議会の受託額769億円と電通への再委託額749億円に差があることについて野党は「中抜きだ」と繰り返したが、給付金の振込手数料15億6千万円などの内訳が公表されていることを考えると合理的な批判とはいえず、政府を追い詰める決定打に欠けた。
一方、経産省側にも大きな問題があった。再委託を含む枠組みについて当初、「自分たちさえ理解していればいい」とばかりに説明を怠り、疑念を増幅させた。協議会・電通と同省の関係が近いことは明らかで、2事業者が参加した入札で協議会を選んだ過程を「総合的に判断した」と説明するが、公正性を証明できたとはいえない。
梶山弘志経産相は月内に給付金事業の中間検査を始めるほか、「疑念を抱かれることがないように外部の意見を聴きたい」と、有識者会議を立ち上げて委託事業全般の透明性向上に取り組む方針。2次補正による給付金の追加委託が控えるほか、観光業などの需要喚起策「Go To キャンペーン」事業といった多くの看板政策に民間事業者への委託が伴うからだ。
東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「霞が関には『予算は編成して終わり』という文化がある。これを機に、厳しい査定を経ていない緊急対策のような予算は特に執行状況をチェックする仕組みを強化すべきだ」と指摘している。
(高橋寛次)