昨年7月の参院選広島選挙区をめぐり、地元議員らに多額の現金を配ったとして前法相で衆院議員、河井克行容疑者(57)=広島3区=と妻で参院議員、案里容疑者(46)=広島選挙区=が東京地検特捜部に逮捕された公選法違反事件で、克行容疑者が初当選した平成8年の衆院選の前にも地元議員らに現金を配布していた疑いがあることが19日、関係者への取材で分かった。産経新聞の取材に元秘書が証言した。
参院選での巨額買収は、克行容疑者の過去の「体験」に基づき行われた可能性がある。弁護人によると、克行容疑者は今回の事件について買収行為を否定している。
克行容疑者は、松下政経塾などを経て平成3年の広島県議選で初当選。5年には衆院選旧広島1区に立候補したが、落選した。
元秘書の男性によると、克行容疑者は5年の落選後、初当選する8年の衆院選に立候補表明するまでの間に地元の県議や市議、町議、支援者らに封筒に入れた数万円程度の現金や食事を提供するなどしていた。議員らに現金を渡した際には領収書は受け取っていなかったという。
元秘書の男性自身も、克行容疑者から頼まれてお菓子と現金20万円程度が入った箱を議員に持っていったと証言。「買収行為はいけないことだと今は理解しているが、当時はこれが政治の世界では普通のことだと思っていた」と振り返る。
克行容疑者の逮捕容疑は昨年3~8月、参院選で案里容疑者の票の取りまとめを依頼するなどし、報酬として計約2400万円を91人に供与。案里容疑者は克行容疑者と共謀し、5人に170万円を渡したとしている。5人のうち2人は克行容疑者から報酬を受けた91人に含まれるという。
永田町関係者は「(夫妻の犯行は)初めてとは思えない大胆な手法。妻の選挙で今回はまずい、と久々に禁断の果実に手を出してしまったのかもしれない」と指摘した。
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東京地裁は19日、克行、案里両容疑者の勾留を28日まで認める決定をした。