【主張】マイナンバー 利便性高めて理解深めよ


 高市早苗総務相がマイナンバーと個人の預貯金口座のひも付けを義務化する方針を表明した。

 災害時などに個人口座に素早く公的な支援金を振り込めるようにするのが狙いである。

 高市氏は当初、全口座の登録義務化を検討するとしていたが、国による個人資産への監視が強まるとの懸念に配慮し、1人1口座の登録に限定することにした。

 新型コロナウイルス対策で政府が一律10万円を支給する定額給付金では、マイナンバーを利用するオンライン申請で大きな混乱が生じた。マイナンバーと預貯金口座がひも付けされれば、こうした混乱を回避することができる。

 行政サービスの効率化には住民情報のデジタル化が欠かせない。マイナンバーの利用を拡大するためにも口座情報のひも付けは必要だ。そうした国民の理解を得るためにはマイナンバーの利便性を高めることが求められる。

 政府は来年の通常国会に関連法改正案を提出し、数年後の運用開始を目指す。現在のマイナンバーは税と社会保障、災害対応の利用に限定しており、新たに公的な現金給付も対象に加える。

 マイナンバーとひも付けるのは預貯金口座の所在に限り、残高などの内容は把握しない方向だ。ただ、銀行口座を保有していない生活困窮者や子供の取り扱いなどは決まっていない。国民の理解と協力を得るためにも、政府は具体的な制度設計を急ぐ必要がある。

 欧米各国の新型コロナ対策で迅速な現金支給が実現したのは、住民情報と口座情報をひも付けして管理しているからだ。日本も現金給付でマイナンバーを使ったオンライン申請を導入したが、各自治体が振込先を手作業で確認するなどで給付が遅れた経緯がある。

 こうした反省を踏まえ、マイナンバーをデジタル化時代の社会インフラとして活用するためにも、預貯金口座とのひも付けは不可欠だ。すでに証券口座はマイナンバーとの連結が進んでおり、銀行などの金融機関が主導して預金者に協力を求めるべきである。

 将来的には、1口座だけのひも付けでは公正な課税や社会保障給付は期待できない。

 少子高齢化で現役世代の負担が重くなる以上、高齢者を含めて資産状況の適正な把握が問われる。そうした観点でもマイナンバーの活用を真剣に議論すべきだ。



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