【北京=西見由章】中国の人気男性歌手、仝卓(どう・たく)氏(26)がインターネット上で自ら大学受験時の不正を告白し、窮地に陥っている。国内世論の激しい反発を受けて当局が調査に乗り出した結果、“組織的な不正”が判明。関与した継父の地方高官ら15人が一斉に処分を受ける事件に発展した。
仝氏は5月22日にネット中継したファンとのやりとりで、2013年6月の大学受験の際、本来は浪人生なのに新卒者になりすましたと告白。「第1志望の大学は新卒者しか募集していなかった。それで(手段を使って)新卒者になった」と明かした。
6月12日に公表された当局の調査結果によると、12年の大学受験に失敗した仝氏は13年の再受験で解放軍芸術学院(現国防大学軍事文化学院)を志望。同校は受験資格を新卒者に限定していたため、山西省臨汾(りんふん)市幹部の父親が手を回して仝氏の戸籍地を北京から故郷の同市に変更し、名前も変えて別人の高校3年生として新たに受験させた。
当局は重大な規律違反があったとして継父を免職処分としたほか、不正に協力した臨汾市の教育関係者ら11人を処分。さらに不正を隠すため公文書を偽造したとして、市幹部ら3人の立件も決めた。
仝氏は結局、第1志望の大学には合格できず第2志望の中央演劇学院に入学。このため不正行為を軽く考えたようだ。ただ不正発覚を受けて母校が仝氏の卒業証書を取り消すなど「うっかり口にした一言」の影響は拡大を続けている。
仝氏の告白が激しい反発を受けた背景には、人生を左右する大学受験で親のコネや賄賂を使った不正が蔓延(まんえん)しているという国民の不信感と怒りがある。首謀者が地方高官だったため、当局から簡単に切り捨てられた側面もありそうだ。