トランプ氏、再び移民を大統領選の争点化 「壁」320キロの成果強調 ビザ発給停止も





23日、米アリゾナ州のメキシコ国境沿いの「壁」建設現場を視察するトランプ大統領(左端)(AP)

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領は23日、メキシコとの国境に近い西部アリゾナ州ユマを訪れ、不法移民の流入阻止に向け国境警備を厳格化していくと強調した。トランプ氏は22日、企業駐在員や特殊技能職など一部の就労ビザ(査証)の発給を今年末まで停止すると発表するなど、11月の大統領選での再選に向けて移民問題を主要争点に改めて位置づけ、米国人の雇用と安全を外国人から守っていく姿勢を打ち出していく考えだ。

 アリゾナ州は共和、民主両党の勢力が拮抗(きっこう)する激戦州に位置付けられ、2016年の前回大統領選ではトランプ氏が僅差で制した。最近の世論調査では、民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領がわずかにリードしている。

 トランプ氏はこの日、メキシコ国境の壁建設が200マイル(約320キロ)を超えたことを記念する式典に出席し、「壁は不法移民も新型コロナウイルスも阻止した」と強調した。トランプ氏がメキシコ国境地帯を訪れるのは今年初めて。

 一方、トランプ氏は22日、特殊技能を持つ人や企業内の転勤者など一部の就労ビザの発給を年内は停止すると発表した。新型コロナの感染拡大で失業者が急増したのを受け、米国民の雇用確保を優先するための措置としている。

 発給停止の対象となるビザは企業内転勤者の「L」、IT技術者など特殊技能職の「H-1B」、熟練・非熟練労働者の「H-2B」、外国人労働者の同行家族の「H-4」、交流訪問者の「J」で、24日から実施される。4月に導入した米国永住権(グリーンカード)の発給停止措置も年末まで延長する。

 クチネリ国土安全保障副長官代行は23日、FOXニュースの番組で、ビザの発給停止で「約52万5千人の米国人の雇用を確保できる」と説明した。

 トランプ氏は、前回大統領選での勝利は、厳格な移民政策と米国人の雇用保護を掲げたことが要因であると確信しており、今回の大統領選でも移民問題をめぐる1期目の成果を強調していく方針だ。



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