「コロナ、台風、地震の3つが重なる可能性も、十分に考えられるんです」
東京都世田谷区の防災担当者は、都内で複合災害の恐れが増していることを指摘する。昨年、台風19号で避難所不足という課題を突きつけた豪雨。今後30年間に7割の確率で起きるとされる首都直下地震。新型コロナウイルスによる感染症の蔓延(まんえん)。とりわけ「3密」対策が必要となる避難所の在り方が問われることになる。
■“満員”で入れない
「収容人数を超えました。こちらでは受け入れられません」
台風19号が上陸した昨年10月12日夜、大田区のある避難所の入り口には、こんな張り紙が掲示された。豪雨の中、やっとの思いでたどり着いた避難所が、“満員”で入れない-。「避難勧告が出ていたのに、いざ避難所に行ったら断られた」「区のホームページがダウンしてつながらず、情報がない」などと住民の不満は噴出した。10カ所の避難所と自主避難スペースでは足りず、区は急遽(きゅうきょ)、5カ所の避難所を開放するなど対応したが後手に回った。
調布市でも想定以上の避難者が押し寄せ、複数の避難所で足の踏み場もないほどの過密状況となった。狛江市では、開設した避難所で収容しきれず市議会を避難所として開放した。「間違いなくこの数十年で最多の避難者数だった。区市町村が予想を超える人数に戸惑ったのは事実だ」と都の担当者は振り返る。
コロナ禍の今年、マスク姿で押し寄せる避難者にどう対応するか。浸水地域が広い大田区では、浸水地域を避けて避難所を開設することが困難だったが、今後は避難所の確保を優先する。2階以上の建物に限定するなどして数を増やし、区内で89カ所の避難所を当初から開設する見通しだ。