放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は30日、オウム真理教の教祖・麻原彰晃元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫=の三女が、松本元死刑囚らの死刑執行を速報したフジテレビの報道特番をめぐり委員会に申し立てを行っていた問題で、人権侵害の問題はなく、放送倫理上の問題もないとする決定を公表した。
対象となったのは、フジテレビが平成30年7月6日に放送した特別番組「FNN特報 オウム松本死刑囚ら死刑執行」。委員会決定では、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件など一連の事件を「戦後犯罪史上屈指の重大事件」と位置づけ、事件の首謀者である松本元死刑囚や、事件において重要な役割を果たした教団元幹部の死刑執行を伝えた番組の意義を「極めて公共性の高い出来事を、公益を図る目的によって放送したもの」と説明した。
名前と顔写真を一覧にしたフリップやシールなどを使って死刑の執行状況を伝えた手法については、番組の特性に言及。急遽(きゅうきょ)放送された特番であり、時々刻々と入ってくる情報を更新しながら伝える目的だったとした。
さらに、死刑執行を速報することは「報道機関の役割であることは明らか」とし、リアルタイムで伝えたことに「死刑をショー化するなどの意図があったとはいえない」と認定した。スタジオに同席した被害対策弁護団の弁護士のコメントについても、「申立人の故人に対する敬愛追慕の情を、許容限度を超えて侵害するものではない」と結論付けた。
同番組をめぐっては、麻原元死刑囚の三女が「人の命を奪う死刑執行をショーのように扱った」と訴え、謝罪を求めて同委員会に申し立てをしていた。